何を願うの?







何を願うの?



『・・・イヤ・・・だ・・・』



やっとの思いでシンジはそう呟いた。



『そんなの・・・・僕の望んだ世界じゃない・・・・』



『・・・そう・・・・イヤなの?・・・・あの娘と一緒なのは・・・・』



『・・・違うよ・・・・』



『・・二人きりになるのが怖いの?』



『だから、怖いとか・・・そんなんじゃないよ・・・・・』



『・・・見殺しにしたものね・・・・シンジ・・・』



『そんな・・・だってあれは・・・仕方なかったんだ・・・・もう済んだ事じゃないか・・・・・』



『・・・ずっと・・・待っていたのよ、あなたの事を・・・・アスカも・・・葛城さんも・・・母さんも・・・・』



『・・・・僕の・・・・・・せいじゃない・・・・』



『・・・シンジ・・・・』























『・・・そう・・・仕方なかったのよね・・・だったらあの娘にもう一度逢って、そう言いなさい・・・・・仕方なかったんだよって・・・・』



『・・・か、母さん!?』



『・・・・・・・・・』



『ちょっと待ってよ!それが今の話と何の関係があるんだよ?・・・だってそうだろ?・・・・みんなと・・・・みんなと一緒じゃなきゃ意味ないじゃないかぁっ!!』





















『・・・・嘘ね・・・・』





















《・・・えっ?・・・》





















《・・・ア・・アス・・・カ・・・?》









ユイの言葉とアスカの言葉とが重なって聴こえた。









その瞬間、量産機に惨殺され拘引されていく弐号機の映像がフラッシュバックする









《・・・・・あ・・・・》



















『・・・もう!・・しつっこいわねぇ!・・バカシンジなんて当てに出来ないのにいっ!!』









《・・・ア・・アスカっ!?》









『負けてらんないのよっ!ママが見てるのにいっ!!』









《・・・ア・・アスカ!・・・ダメだっ!そっちへ行っちゃ!!》









『・・ロンギヌスの槍!?・・・・・ヒッ!!』









《アスカっ!!・・・くっ!・・母さんっ!・・・・やめてよっ!》









『ぎゃああああああああああああああああああっ!!』









《アスカっ!・・アスカぁっ!!!・・・くそっ!何で!?》









『ああ・・・ああぅぅぅ・・・こ・・殺してやる・・・・・・殺してやる・・・・殺してやる・・・殺してやる・・・殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してや・・・・・・















ドシュッ!!









《アスカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!》









動悸が激しくなり、シンジはガクガクと震え始めた。

彼の中に、アスカの断末魔の意識が流れ込んできた。

シンジが好きだった少女の華奢な体は、量産機の放った槍の直撃を受け二つに切り裂かれた。



そして消えゆく意識の中で、言葉に出来なかった少女の想いが少年の心をかすめていった





















《・・・シン・・ジ・・・・・・好・・》





















その直後、その小さな命は槍に押し潰され、少年への淡い恋心を抱いたまま儚く散った









『うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!』









どうしようもない悔恨の念が少年を襲う









『・・・あ・・・・あ・・・うっ・・・ぅ・・・ア・・アスカぁ・・・・・ぅ・・』



















『・・・・・・・・・・・・・!?』




『・・・・ここは?・・・・弐号機の中!?』




気が付くと、シンジは弐号機のプラグシートに座っていた。




そしてその右腕は二体の量産機の体を貫いていた。




『こ・・・これは!?・・・・・・はっ!?』




シンジは何かが飛来する気配を感じ、反射的にその右腕を引き抜き、無造作にA.T.フィールドを展開した。




『!?・・・ロンギヌスの槍!?』




そしてそれは確実にA.T.フィールドを侵食し、そして・・・・




『ぎゃああああああああああああああああああああああああっ!!』




弐号機の左目を貫いた・・・




活動限界を迎える弐号機。

そしてそこに再起動を果たした量産機が群がり、臓物を喰らい始めた。

それはあたかも、ゼウスの怒りを買い、禿げ鷹に永遠に内臓を喰らわれる罰を受けたプロメテウスのように、何度も何度も、シンジの身も心も引き裂いた。




『・・・・うっ・・・・うぐうっ・・・・・そ・・・そうか・・・・・』




それは、左目を貫かれ、生きたまま臓物を喰らわれるという想像を絶する痛みと苦しみであった。

そして薄れゆく意識の中で、シンジは呟いた




『・・・・これは・・・・罰・・なん・・だ・・・・・・・アス・・カを・・・見殺しに・・した・・・・・僕へ・・・の・・・』




そして・・・・ケージに一人うずくまる少年の姿が、シンジの脳裏に浮かび上がる





















『・・・・だって・・・エヴァに乗れないんだ・・・・・・・どうしようもないんだ・・・・・』





















『うわああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!』









『なんで・・・・なんで僕はそこにいるんだ!!なぜ何もしない!?なんでアスカを助けなかったんだ!!!・・・・あんなに・・・あんなに僕の事を想ってくれてたのにっ!!・・・・ううっ・・・・ちくしょう!・・・・ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!!!』









『誰か・・・誰かアスカを助けてよっ!!!』









『・・・僕を・・・・助けてよ・・・・・・・』









『誰か・・・・助けて・・・・・』









『・・・・・シンジ・・・・・・・』









『・・・母さん・・・・・』









『・・・・それがあなたの・・・願いなのね・・・・・』









『・・・・でも・・・僕は・・・取り返しのつかない事をしてしまったんだ・・・・・』









『・・・シンジ・・・・今のあなたは“神”に等しき存在なのよ・・・・・あなたに出来ないことなんて何もない・・・・そう・・・刻を遡る事だって・・・・・』









『ようく考えて御覧なさい・・・シンジ・・・・』



















『何を願うの?』





2005/10/18 ケータイ版に掲載
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